最終更新日 2024年2月16日 by fireluche

1,規制強化により廃業するバス会社が増えた

貸切バスは、昭和40年には14,857車両で総走行距離が5億km程度でしたが、平成28年には51,539車両で総走行距離が13億kmとなっているのが現状です。

乗合バスは、昭和40年には62,923車両で総走行距離が26億km程度でしたが、平成28年には60,429車両で総走行距離が31億km程度と車両数が減る一方で総走行距離が約20%程度増加しているだけです。

その為、バス車両の耐久性や動力性能などの著しい向上を考えれば問題ない数値であり、利用者も安心して利用したいと思うレベルと言えます。

貸切バスは、昭和30年には428社しかありませんでしたが、平成24年には昭和30年10倍以上の4,536社まで増加しています。

しかし、平成28年1月15日に発生した軽井沢スキーツアーバス事故や2017年6月10日に発生した東名高速道路中央分離帯飛び越え正面衝突事故などに起因する規制強化により廃業するバス会社も多く、平成27年には4,508社まで減少しました。

2,運転手の過密勤務が原因の事故が注目された

乗合バスは、昭和30年には346社と428社の貸切バス会社と大きな差はありませんでしたが、昭和30年年以降平成28年まで増加し続け2,267社になるものの貸切バスの半分程度です。

軽井沢スキーツアーバス事故は、国道18号碓氷バイパスの入山峠付近のガードレールをなぎ倒した事故であり、乗員乗客41名中の15名が死亡し1985年に発生した犀川スキーバス転落事故に次ぐ大惨事となりました。

原因は、バス運行専門会社では無く警備業務を手掛けていた会社が7台の車両で運営していた事があり、運転手の健康診断や乗務前の酒気帯び検査など必要不可欠な検査を怠っていた事が最大の事故原因とされています。

背景には、スキーツアーや外国人旅行者などの増加と2000年の規制緩和によってバス会社が5,000社を超えるまで増加した事があり、格安バスツアー競争が過剰にヒートアップした事により過酷な労働環境で働く運転手が減少してしまった運転不足があります。

犀川スキーバス転落事故は、長野市の国道19号で犀川にバスが転落し、乗員乗客46名中25名が死亡した業界で最悪の事故です。

原因は、軽井沢スキーバス事故や東名高速道路中央分離帯飛び越え正面衝突事故などと同様に運転手の過密勤務であり、過密勤務に起因する速度超過と冬季の悪い道路状態が重なった大惨事と言えます。

国土交通省では、軽井沢スキーバス事故を受けて平成28年より総合的な対策として安全性評価認定の取得状況やASV導入台数などを公表しており、全ての事業者を対象に事業年度終了後100日以内の報告義務を課しているのが現状です。

3,安全性を強化するシステムと取り組み

公益社団法人日本バス協会では、悪いイメージを払拭すると共に事業者の質の向上を目的として貸切バス安全性評価制度認定制度を公表しており、1つ星〜3つ星の3段階で安全性を評価している認定制度です。

この認定制度は、運行するバスの車体に認定事業者の証であるセーフティバスマークを貼付する事が出来るだけで無く、各事業者のホームページや従業員の名刺などにこの認定制度のシンボルマークを表示する事が出来るので取引先に提示出来るメリットがあります。

認定制度は、書類申請で合格した事業者に1つ星が与えられ、1つ星と2つ星の認定を2年間継続すると共に書類審査で100点満点中80点以上獲得する事で2つ星や3つ星へレベルアップ出来る認定制度です。

認定事業者は、平成31年1月31日現在全国で1,638事業者あり、3つ星のセーフティバスは少なくとも4年以上の星を獲得し続けている優良事業者と言えます。

ASVは、先進安全自動車と呼ばれる高速道路交通システムであり、身近なシステムではSUBARUと日立オートモティブシステムズが開発した「Eyesight」やダイハツ工業が採用している「スマートアシスト」です。

バス車両では、衝突被害軽減ブレーキシステムや車線逸脱防止支援システムなどのASVシステムがメーカーによって搭載され、既存の車両の約15%には後付けの先進運転支援システムADASが搭載されています。

また、乗用車だけで無くバスでもシートベルトの着用が義務化された事から急ブレーキによるトラブルリスクが軽減され、メーカーでは従来車両に比べて強力なブレーキの開発及び搭載を進めている事から事故の発生リスクが大きく軽減されているのが現状です。

貸切バスの利用状況は、元トヨタ自動車の商品名だった乗車定員11名〜29名までのマイクロバスが全体の40%以上を占めており、次いで約30%の大型バスと約20%の中型バスの順となっています。

マイクロバスは、大型バスや中型バスに比べてレンタル料金が割安であり、旅行目的よりも様々な送迎を目的として貸し切られる事から外観や乗り心地よりも経済性が求められる傾向が強くなっているのが業界の傾向です。

故に、財務的に苦しい事業者が大半を占めており、国土交通省が考えるほど安全性と運転手の労働環境及び給与面が改善されていない厳しい業界です。

引用元:貸切バス沖縄