最終更新日 2024年2月16日 by fireluche

解雇とは、雇用主が従業員の合意なしに一方的に労働契約を解除することを指します。
従業員側に自らの意志で企業を辞める権利があるように、企業側にも従業員に対して労働契約の解約を申し出る権利があります。
どちらも結果的に会社を辞めることになりますが、会社を辞める理由として解雇扱いとなれば自分の職歴に傷が付くことになります。
一方で企業側にとっても「労使トラブルの火種となる」ことや、「雇用関係助成金の支給に影響が生じる」などのリスクが発生します。
そのため労使双方の今後に爪痕を残す可能性があることから、「どうしてもそうせざるを得ない場合の最終手段」として位置付けられており、現在の法律においても、雇用主に比べて立場の弱い従業員を保護するという観点から厳しい要件が課されています。

解雇の種類

そんな解雇には「普通」「整理」「懲戒」の3種類があることをご存知でしょうか。
この3種類はその理由や性質が大きく異なり、その限界や法規制にもそれぞれ違いがあります。

普通解雇

「普通」とは労働者側の債務不履行を理由としたもので、「客観的に合理的な理由」が認められる必要があります。
では、どのようなケースが「客観的に合理的な理由」に相当するかというと、「勤務成績が著しく悪い場合」「採用時の経歴に詐称が発見された場合」「けがや病気によって正常な労働義務を果たせなくなった場合」などが挙げられます。
何れも就業規則によって規定されていることが一般的で、これらのどの事由に該当するかという観点で判断することになります。

整理解雇

次に「整理」とは、企業が経営危機にあるなどの理由により人員削減を目的とすることを指します。
最近では「リストラ」と呼ばれることが多く、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言による外出自粛やそれに伴う飲食店・旅行業界を中心とした急激な業績の悪化などで、この単語を一度は耳にした方も多いのではないでしょうか。
業績不振に陥った企業が存続するためにやむをえず行なわれるもので、その目的は人員削減をしてコストを下げることにあります。
ただし、その有効性を判断するためには「人員削減の必要性」「人選の合理性」「企業側による回避の努力の有無」「手続きの妥当性」の4つの要件を満たさなければなりません。
特に、落ち度のない労働者を経営上の理由で辞めさせることは労働者の生活や将来設計に大きな影響を及ぼすため、企業側による回避努力は大きな要因となります。
具体的には、雇い止めを行わないための役員報酬の削減や交際費などの経費削減、残業を禁止するなどのさまざまな施策を講じる必要があります。
更に、整理の場合は労働基準法上「予告」をしなければなりません。
30日以上前に予告通知があったかどうかは重要なポイントで、予告がなかったり間に合わない場合は30日分以上の予告手当を企業は支給する必要があります。
他にも労働組合や労働者に対して事前説明や事前協議を行なわなければならないというルールもあり、これらの説明や協議の機会が与えられずいきなり整理が決行された場合は無効にできる可能性が高くなっています。

懲戒解雇

最後に「懲戒」とは、労働者が企業が健全に運営するための秩序を乱す行為を行った場合に、雇用者が一方的に労働契約を解約することを指し、3種類の中で最も重い罰則として位置付けられています。
どのようなケースが懲戒に該当するかは就業規則や規程に具体的な事由が明記されている必要があり、万が一就業規則に何も規定がない場合には、実務上において懲戒として扱うことが難しくなるため普通解雇として手続きを進めることになります。
具体的に懲戒が有効となるケースとしては、業務上の地位を利用した犯罪行為があります。
経理担当者が不正経理によって横領行為をしていたとか、営業職員が架空取引を計上して利益を得ていたという場合がそのケースで、これらが刑事事件として立件されるかどうかは別としても企業に対する重大な背信行為となるのは明らかで、それに加えて企業の損害も通常大きなものとなるので懲戒の理由には十分に当てはまると考えられます。
また、会社の名誉を著しく害することもその対象です。
業務とは全く関わりのない私生活上の行為であっても、殺人や強盗、強姦などの重大犯罪を始めとして会社の名声を著しく貶めるような行為がある場合は懲戒が認められます。
更に、懲戒の場合は退職金の支給に関して減額もしくは不支給といった規定を設けている企業が多くなっています。
なお、有給休暇に関しても未消化の有給休暇をどうにかして消化できるように有給休暇を取得させる期間を設定したり、有給休暇の残日数を買い取ったりといった配慮は必要はありません。

まとめ

このように、何れの場合でも解雇処分は生活に非常に大きな不利益をもたらします。
法律的に問題がないかを判断することが不可欠であるため、例え懲戒解雇であっても労働問題に詳しい弁護士に相談することが必要です。

出典:「解雇とは?」わかりやすく解説しています。